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  愚者のたわごと 第4回

平成12年1月発行
 
 バブル経済の崩壊が、エルト桜井を直撃した。平成六年三月、近鉄百貨店がビルから撤退すると、坂を転がるように二階のテナントの退店がはじまり、近鉄頼りの店舗形態はたちまち崩れていった。

 顧みれば近鉄百貨店に関しては、入店に至る経過から苦労の連続だった。まず、大型店舗規制法と駅前の商店などが商圏を奪われるということで、商工会商業部会からブレーキが掛けられた。部会から何回か呼ばれ 近鉄の取締役共々出向いて説明、説得に及び、同意を得るための苦労たるや実に大変だった。

 この随想を書き出してから「大変だった」と言う言葉を随分使ったように思うが、エルト桜井を語るとき「大変だった」が多くなるのは仕方がない。事実、何もかも大変だったのである。 話を近鉄百貨店に戻そう。 もともと近鉄は桜井駅前への出店を渋っていた。それをなんとか説得してOKを取りつけ入店に漕ぎつけた経緯がこちらにはあった。 その一つに商工会や地元の同意はすべて再開発組合が責任を持つという条件もあった。

 だからここで商工会などの同意が得られないと、エルト桜井の計画は水泡に帰してしまう。商工会との交渉では商工会、地元にはもちろん、近鉄に対してもはれ物に触るようなもので、組合側はいつも冷や汗の連続だった。随分キツイことを言われたがこれはもう過去の話である。

 ところがさて退店となったら、近鉄入店にあれほどブレーキを掛けた人たちが、こんどは「よう引きとめんのか」「始めからこうなるの分かってた」「駅前をゴーストタウンにした」と、轟々の非難を浴びせてきた。まさに毀誉褒貶である。近鉄の撤退はもちろんエルト桜井にとって絶体絶命のピンチである。必死で継続の交渉をしたが、バブル経済崩壊後のすさまじい経済状況のもと、赤字繰越の不採算店舗の撤退を引き止めることなど到底出来なかった。

 しかし、簡単に引き下がるわけには行かないので、近鉄主導の店舗展開で一階は食料品、二階はローコストの日用雑貨品の店という企画を提案した。近鉄はこの提案に乗った。その時の近鉄の条件は、一階での生鮮三品の販売について地元の同意が得られること、二階は全店舗を近鉄に明け渡すことであった。

 この条件を満たすのに約一年かかった。二階の残存店舗との交渉、近鉄との交渉を粘り強く続けて漸く条件を満たす目途がついたとき、肝心の近鉄からあっさり断られてしまった。一年の労苦がフイになったとき、さすがの私もカチンと頭にきてしまった。

 それでも気を取り直し、百貨店の親会社の近畿日本鉄道の力を借りようと考えた。百貨店も鉄道の言うことなら聞いてくれるだろうと思ったからだ。そのため市長も動かし、県の幹部やあれこれコネを探して、ついに当時の鉄道の会長だった上山氏に会う機会を作ってもらった。

 鉄壁の論陣を張り何がなんでも前向きの返事を取りつけようと決意して臨んだ。 私の論法は、奈良県と桜井市が如何に近鉄にとって重要なドル箱であるか、そして、桜井市こそが日本の歴史文化を花咲かせる最重要拠点で在ることを、弥生時代、古墳時代、そして得意の邪馬台国論など、考古学的具体例もあげて主張、さらに近鉄がその要の軌道であり、京阪や阪神、JRとは根本的に違う古代文化にとって優位性のある鉄道であることを力説するにあった。そしてそれは桜井から始まることを説明し、そのためにも文化性の高い店舗、そして大和歴史文化観光の拠点を桜井駅前に作って欲しいと訴えた。

 会談は和気藹々であったが、結果は聞き置くにとどまり目論見は稔ることなく見事挫折、空虚な敗北感が私の胸の中を流れた。しかし上山会長に述べたことは信実私の持論であり、今も変わっていないし、この信念も忘れていない。

 会談のあと、会長宛に便箋十一枚に及ぶ長文の手紙と若干の資料を添え丁重な礼状を送り、桜井市とエルト桜井へ更なる協力をお願いしたが返事はこなかった。  桜井ジャーナルの4号は新年号である。何となく一休禅師の「門松や冥土の旅の一里塚目出度くもあり目出度くもなし」の歌が偲ばれて・・・    (つづく)

 
  芝 房治
(日本文化の源流
 桜井を展く会幹事長)
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